疾患

CCHSについて

●先天性中枢性低換気症候群【CCHS】とは?

Congenital Central Hypoventilation Syndrome

私たちは普段、無意識に呼吸をしています。眠っている間も、呼吸が止まることはありません。それは、脳幹部にある「呼吸中枢」が、常に見守っているからです。

先天性中枢性低換気症候群〔CCHS〕は、呼吸中枢に障害があり、主に眠っているとき、"呼吸が止まる"難病です。 "呼吸が止まる"とは、肺で酸素と二酸化炭素のガス交換ができず"低換気"に陥ること、すなわち、"高二酸化炭素血症、低酸素血症"のことです。"低換気"を放置すると、心不全や中枢神経障害を引き起こし、致命的になります。"低換気"になっているにも関わらず、患者本人は気づかないことが、〔CCHS〕の特徴です。
また、これまで、「眠っているとき」と言われていましたが、「起きているとき」も、"低換気"に陥っていることが明らかになっています。特に、風邪等の感染、過度の疲労・集中、標高や気温等の環境負荷によって、患者本人は眠っている状態と同じく、"低換気"状態になります。さらに、重症例では、眠っているとき、起きているときに関わらず、常に"低換気"になっています。

このため、CCHSの患者は、生涯にわたり、人工呼吸器による継続的な呼吸管理が必要となります。CCHSの患者が起きているときにも"低換気"がみられる場合は、気管切開をして、常時人工呼吸器を着けます。人工呼吸器による適切な換気を行い、いかに"低換気"の状態にさらさないかが、生活において重要になります。軽度の場合、成長の段階で気管切開を閉じ、バイパップ換気方法(マスクタイプ)に移行することも可能です。

原因、発病の仕組みは不明で、治療法はありません。発症率は、20万人に1人と言われており、日本では約100人、アメリカでは約500人の患者がいると推計されています。先進国以外では患者数を把握することが難しく、全世界での患者数は分かっていません。日本の患者の場合、現在、約65%は中学生未満が占めています。CCHSは、生後から発病しますが、中には幼児期を過ぎてから、感染症等をきっかけに発病する「遅発性(LO-CCHS)」も存在します。CCHSは、出産のときの問題とは関わりがなく、大人の睡眠時無呼吸症候群(SAS)等とも、異なる疾患です。

CCHSは、呼吸中枢の障害に加え、自律神経障害を合併します。大腸に神経のない「ヒルシュスプルング病(巨大結腸症)」、心臓の心拍停止が起こる「結節機能不全(洞不全症候群)」、中枢神経障害(てんかん、成長と発達の遅れ)等、様々な合併症が報告されています。

●呼吸の仕組みとCCHS

肺での"酸素と二酸化炭素のガス交換"、すなわち「呼吸」は、私たちの生命維持には欠かせない仕組みです。ガス交換が適切に行われているかどうかは、脳や首にある"センサー"によって常に見守られています。血中の二酸化炭素濃度が上昇すると、それを感知したセンサーは、自律神経中枢に命令を送ります。自律神経中枢はすぐさま呼吸中枢に命令を出し、これによって、横隔膜が収縮し、胸郭の容積が増えたり減ったりすることで、「呼吸」が行われます。

しかし、CCHSの患者は、血中の二酸化炭素の上昇や酸素の低下に対する"センサー反応"が弱い、又は無いため、二酸化炭素を充分吐き出すことも、酸素を取り入れることもできません。この状態を"低換気"といい、放置すると死に至る"高二酸化炭素血症、低酸素血症"を引き起こします。